ヒナを拾わないで -やさしい気持ちはそのままに-
トイレから自席に戻ると、そこには小枝にちょんとのったヒガラのヒナ。
「カラスに襲われたらイカンから、連れてきたんだ。良くしてやってくれ。」
・・・と一般の方が言い残して、置いていったそう。
慌てて飛び出して、その人を追いかける。
「先程ヒナを持ち込まれた方ですか。ちょっとお時間よろしいですか?」
運良く見つけられたので、はやる気持ちを抑えて、ヒナが収容された場所と状況をお伺いする。
なぜこんなに焦っているかというと
1.巣立ち間もない野鳥のヒナを、拾ってきてしまう方がいる
2.しかしこういう場合、ヒナの近くに親鳥がいて見守っている場合がある
3.人がヒナに近づくことで親鳥が警戒し、ヒナを諦めてしまうことがある
つまり、ヒナに人が近づいてしまうことで、ヒナの連れ去りが成立してしまう
ことがあるのです。
ヒナを拾われた方は、ヒナを心配したから拾った。
「慈しみ」が同期になっている場合が多いので、慎重に話を続けます。
「ヒナについてご相談いただきありがとうございます。ただ、大変恐縮なのですが、
ヒナを拾うことは、ヒナにとって良くないことがあるのです・・・」
と切り出して、さっきの3項を説明する。
最初は理解に苦しむ、といったご様子でしたが、
最後にはヒナをよろしくと言われましたので、
あとでヒナをそっと元の場所に戻しました。
---------------–
正直、ヒガラのヒナがカラスに食べられることはよくあることなので、
「食べられるのは仕方ない。カラスも子育て中。カラス側の事情もある」とも言えます。
ただ、このシチュエーションで重要なのは、ヒナを持ち込まれた方の
「慈しみの心」をいかに尊重するか、ということだと思います。
たとえ行動が不適切だったとしても、ヒナを想う気持ちは本当だったわけですから、
ここで「なにしてんだアンタ!」と強く否定するのではなく、
小難しい理屈をやわらかく説明して、
「より、ヒナのためになることをするにはこうしたほうがベターですよ」と
提案することが大切だと思います。
そうすればきっと、ヒナを持ち込まれた方は「慈しみの心」をそのままに、
次はより良い行動を取れると思います。
参考:
日本野鳥の会 「野鳥の子育て応援キャンペーン」https://www.wbsj.org/activity/spread-and-education/hina-can/
公益財団法人日本鳥類保護連盟 「『ヒナを拾わないで!!』キャンペーン」http://www.jspb.org/hinakyosan.html
ヒガラのヒナ。ぱっと見だとシジュウカラと見紛うが、
よく見ると中雨覆に白い部分が交じるので、ここで区別できる。
↓よろしければ。励みになります。
最近のコメント